2010年3月9日

金工の埋蔵物 「湯床吹き」と「鍛金」をめぐって14



金工の埋蔵物 「湯床吹き」と「鍛金」をめぐって14

先輩でもあり、鍛金のスジミチやRAVEPORTEで一緒に活動していた関井一夫さんの学術論文を本人の許可のもとに連続掲載します。

出典:多摩美術大学研究紀要第20号 2005年掲載


3.湯床・技術の埋蔵物

3-1.湯床吹き

「湯床吹き」という耳慣れない技術がある。湯床と言っても 風呂のたぐいではないが、風呂と全く無縁ではない。このような切り出し方をすると、いたく怪しげな技術と思われるかもしれないが、この「湯床吹き」にも、ある問題が隠れているのである。「湯床吹き」をめぐり更に論考を進める。

 
図10 自然銅 (Michigan,U.S.A.産出)

銅塊は、自然銅(図10)という形で銅鉱石と共に発見された。しかし人為的に銅鉱石から銅を検出する為には、高い熱量の生産と同時に、銅鉱石中に含まれる銅以外の金属も取り除かなければならない。今日のような99.99%以上の高純度の銅が精練されるようになったのは近代になってからの事で、銅には銅以外の金属(銀等の不純物)が数パーセント混入していたのである。 銅材料ができるまでの工程は、銅鉱石を高温で加熱して銅を取り出し、不純物を除去し純度を高める。この精練後の銅は再度融解し、熔湯を型に流し込みインゴットを作り、高温で熱間加工し、後に室温で仕上げ寸法に冷間加工して一次製品となる。

「吹き」とは、鋳造を示す呼称であり、「湯床吹き」は、「湯床鋳造」と言える。「湯床吹き」は、銅材料製造における古のインゴット製造の工程であり、今日の銅精練の中では行われていない技術である。